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経営学の基礎用語
プロダクト・ポートフォリオマネジメント
PPM / products portfolio management

 多種類の製品を生産・販売したり、複数の事業を行ったりしている企業が、戦略的観点から経営資源の配分が最も効率的・効果的となる製品・事業相互の組み合わせ(ポートフォリオ)を決定するための経営分析・管理手法である。
 一般に、外部変数(市場や産業の成長性、魅力度)と内部変数(自社の優位性、競争力・潜在力)の2つの視点から、製品や事業ごとに収益性、成長性、キャッシュフローなどを評価し、その拡大、維持、縮小、撤退を決定する。
 PPMは、1960年代半ば以降の米国でGE(ゼネラルエレクトリック)などの巨大コングロマリット企業が事業再編を進める中、ボストン コンサルティング グループ(BCG)が1970年代に提唱したものを嚆矢とする。きっかけは輸出攻勢で世界市場を席巻し始めた日本企業の存在で、当時の日本企業が低価格で市場シェアを取ることを重視していたことから、それに米国企業が対抗する手段として事業の選択と集中を行う際の指針を与える方法として編み出されたものである。
 BCGモデルでは分析対象となる製品・事業が属する市場の成長性を縦軸に、競合他社との相対的な市場シェアを横軸に取ったポートフォリオチャート(成長−シェア・マトリクス)を設定し、ここに各製品・各事業を円形(バブル)としてプロットする。円のサイズは企業総売上の収益性に対する当該製品・事業の売上収益性を表す。その結果、企業が持つ製品・事業は、成長性/資金創出力ともに優位な「金のなる木」から、両者がともに芳しくない「負け犬」まで4つに分類されることになる。


成長−シェア・マトリクスは製品・事業の成長性が資金需要(必要な投資額)を規定し、市場シェアが資金創出力(投資資金を生み出す力)を規定するという考え方に基づいている。従って、これを使ったBCGモデルが示す投資戦略は、
「金のなる木」は大きな追加投資なしにキャッシュフローを生み出す事業、
「花形製品」は市場の成長に合わせた投資を続けていくことが必要な事業、
「問題児」は市場の成長に対して投資が不足している事業であり積極的な追加投資か、撤退が必要な事業、
「負け犬」は将来性が低く基本的に撤退すべき事業と考え、「金のなる木」から得た収益を「問題児」に投入し、「花形製品」に育てるといった形が原則となる。

 BCGモデルでPPMを行うときにポイントとなるのは、戦略的視点による“市場セグメンテーション”である。このモデルの分析軸となる市場成長性と市場シェアは、どちらも「どのような市場を想定するか」に依存している。ここでいう市場とは経済統計などで用いられる産業区分ではなく、戦略論やマーケティングでいうところの市場セグメントである。セグメントの仕方(測定指標の取り方)次第で市場の成長性も市場シェアもまったく変わってくる。
 PPMの分析対象となる製品・事業は、戦略立案・実行が可能な戦略事業単位として整理されていることが前提である。SBUは必ずしも業務オペレーション上の組織と一致しなくてもよいが、長期的な計画立案ができるようにSBUの将来性・収益性や戦略的な行動を評価する指標と体制が整備されている必要である。
 成長−シェア・マトリクスは、異なる市場に展開する異なる製品・事業を同じ平面に配置する。従って市場の特性や自供によっては、実際には大きな収益を挙げている製品・事業が低成長・低シェアなものとして表示されることもあるので、図示された結果だけをうのみにしないように注意すべきである。
 PPMというと上図のBCGマトリクスに焦点が当たりがちだが、この図は考え方を説明しているにすぎない。PPMは戦略レベルの投資マネジメント手法であって、各製品・事業の現状と将来性を正しく評価し、収益から投資への流れを適切に管理することをいう。
 BCGの成長−シェア・マトリクスは1970〜1980年代にかけて、欧米のコングロマリット企業で広く活用され、同時期に相次いで同種の戦略立案ツールが考案された。その中ではGEとマッキンゼーが共同開発したビジネススクリーン(GE Nine Cell Planning Grid / GE's Business Screen)が有名である。
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