チュニジア
チュニジア(4)・・サハラ Dec 1999
 サハラの夜明け      置いてけぼりを食らう
朝日の光結局、一睡もできずに朝を迎えてしまった。いや、朝を迎える前に我慢できずに起きてしまったと言ったほうが正解か。吐く息が白いのを見ると、さすがに昨夜の寒さが伺われる。 
朝食の準備のため又も枯れ木を集めて燃やし始めると、徐々に身体が暖まってくるのがわかる。
朝食はあつあつのパンだ。火が消えたばかりでまだ赤々としている薪の弱火を利用し、小麦粉を練ったパン生地を焼くと、手では触れないほどのあつあつパンの出来上がりだ。 
静かに昇る朝の光りに照らされながら焼きあがったパンを食べると、やっと身体が暖まってきた。サハラの夜明け
朝食後、突然ガイドが「さあ急いで!」と言い出した。どうやら迎えの車がくる時間が近づいたようだ。ここから彼の家までどのくらいかかるは全く見当がつかないが、彼の様子からみるとかなり急がなければならないようだ。あわただしく出発の準備をし、ラクダを引きずるようにして歩き出すガイド「帰りは歩きだよ」「ふぇ?!」ラクダに乗ったのでは遅くなってしまうから、歩いてくことになったようだ。 
いったいどれくらいの距離を歩かなければならないんだろう。辺りに建物らしき物は一切なく、わかるのは帰る方角の見当がつくくらいだ。確かにモタモタしたラクダの歩みに比べれば、自分の足で歩いた方がはるかに早いに決まっているが・・。 

それにしても歩きづらい。砂に足が取れてて歩きづらい。おまけに昨夜の寒さ対策で着込んだ上下を脱ぐ時間さえなかった。突き進むガイドの背中を追って汗をかきかき走るように追いかける私。背中には重い荷物を背負っている。貴重品なんてないからラクダに乗せたいなあ。 

なかなか迎えが来ないなあ。ガイドの家の前で迎えを待つ私。約束の時間を過ぎても、迎えの車はいっこうに現れる気配がない。どうせここはアラブだ、気楽に待てばいい。そんな悠長なことを考えていると、ガイドがとんでもないことを言い出した。「タクシーを拾おう」「ふぇっ」タクシーなんてこんなところを走っているわけないじゃないか。 
防砂堤?!彼の話では、近くの街まで行って、そこでタクシーを拾うということらしい。でも、近くに街なんてあったかな。案の定、街なんて近くには無かった。冬とはいえ日中の日差しは思ったよりも強く、バテバテで歩く私に容赦なく襲い掛かって来た。途中で偶然出会ったがガイドの友人と3人で歩く脇を、4WDに乗った白人のツアーが通り去って行く。なんでこんなところを歩かなきゃならないんだ。これがもし夏の炎天下だったら死んでいるんじゃないか、あまけに今はラマダーンだ、水も飲めない。 
それにしてもこんな荒涼としたところで、アスファルトの道があるなんて不思議だ。いったいいつ先人たちはこんな立派な道路を作ったんだろう。道路に平行して、小高い丘がつながっている。二人に聞くと砂を避けるために盛られた丘だと言う。。砂嵐ともなるとすごい砂が吹き荒れ、道路なども砂に埋もれてしまうそうだ。海なら防波堤、風雪なら風防堤、さながら砂なら防砂堤といったところか。 

 ドゥーズの友達           ツアーの誘い
ツーリズムのオフィスに戻ると鍵がかかっていて誰もいなかった。文句の一つでも言ってやろうと待っていると、とぼけた顔で自称ガイド氏がやって来た。「ひどいじゃないか、誰も迎えに来なかったじゃないか。約束が違うぞ」「そんなことはない、ちゃんと迎えに行ったんだ。でも、お前がいないからそのまま帰ったんだ」話を聞いてみると、迎えの時間が約束の時間と1時間も早かった。それにしてもひどい、仮に時間通り来なくても、もしや何かトラブルがあったのでは?!と心配して待つべきじゃないか。それに迎えが来てたなんてベドウィンの家族は一言も言っていなかったぞ。続けて文句を言おうとすると「ところで、マトマタへ行ってみないか?」人の話を全く聞かずに勝手に話を続ける「マトマタへまでサファリをスペシャルカーで行き、そこで食事だ。それもホテル・シデイ・ドリスで食べるんだ、いいだろう」もう次のツアーの話を始めた。呆れた私はもちろん抗議「マトマタはどのくらい距離があるんだ?で、スペシャルカーってどんな車?料金はいくら?」全く懲りていないらしい、全然抗議になっていない。昨夜、悪夢のような一夜を過ごし、今朝は今朝で迎えに来ないというひどい目に遭ったのをもう忘れたらしい。 

マトマタはこの辺ではピカイチの観光スポットだ。ホテル・シデイ・ドリスはあのスター・ウォーズの撮影にも使われすっかり有名になり、観光ツアーでは必ずここを訪れるという。 
距離は往復200kで、時間は2時間かかるという。それほど遠くもない距離で、明日のフライトには充分間に合うだろう。それになによりも魅力的な場所だ。 
すっかりその気のなり、「で、いくらなんだ」「スペシャルカーでの移動と昼食込みで100Dだけど、お前は友達だから80Dでいいよ」良く聞くセリフと共に車の絵をいたずら書きしだした。そのへたくそな絵は4DWのようだ。4WDでサファリを疾走するなんて実に魅力的だ。 

結局、ツアー代金を50Dまで値切ってツアーに参加することになった。車を待っていると「ほら、これがスペシャルカーだ」期待に胸を膨らませる私の前にその車が・・ない。どこを見てもそれらしい車が見当たらない。「どこ?」いったい車はどこにあるんだろう「これこれ、この車」指差す先にはガランゴロンと奇怪な音をたて、車種の特定さえ出来なくなったような車が一台・・ 。 
「これがスペシャルカーか?この車でサファリを渡れってのか?!」とてもサファリを渡れるようには思えない。もう少し上手な絵を書けよ、車を傷だらけに書くとかガラスが割れている絵とか・・。
支払った金を半ば強引に取り戻し、その場を後にした。

マトマタに行きたいのはやまやまだが、私は本当のサハラの姿を知らない。翌朝のフライトを控えた身では、今からはあまり無理な行動はできない。あの、いつ朽ちても不思議でないスペシャルカーでサハラに行ったのでは、明日のフライトに間に合わなくなるかも知れない。もし、そんなことになったら今回の旅行が女房にばれて、例の黒い家の軒下に埋められてしまいそうだ・・。 
スークの風景「どう、マトマタ行かない?」「!」そこ辺をぶらついているとさっきのガイドとばったり出会ってしまった「マトマタはいいよ。別の車にするからそれで行こうよ」さっきの車がいやなら別の車、それもタクシーで行こうと言い出した。なんともしつこい奴だ。いや、考えようではなんとも仕事熱心な奴だ。これくらい熱心なのはアラブでは珍しいのではないだろうか。こんな奴がアロエフロートに勤めていれば・・ 

一瞬、行こうかなと思ったが、又も彼の誘いは断った。マトマタの誘惑はいつしか薄らいでいた。
行くあてもなくふらふらとぶらついていると、今度はスークに出た。 
スークでは意外なことに食品が多く売られていた。日中には食べないのだが、夜にはそのぶんたらふく食べるので必要なのだろうが、食べてはいけないが売り買いが自由ってところが面白い。 
それにしても、ところ狭しと並べられた野菜や果物はどこから持ってくるんだろう?!、荒涼と広がる砂漠の中でわずか残ったオアシスから採ってるんだろうか。 

その後、土産物屋のはしごにも飽きてバスターミナルにやってくると、「マトマタ行こうよ」又もガイドに出くわした。今度はタクシーで乗り付けていた。なんと彼は私を待ち構えていたのだ。さっきも偶然ではなく、私を捜していたのだ。「マトマタ行こうよ、最高だよ」なぜこんなに粘るんだろう「俺とお前は友達だ。いくらなら出す?」又も決まり文句をいい、値段交渉を始めた。「行かないよ、もうチュニスへ行くから」今度はたった一言であきらめてしまった。せっかくここまで追いかけてきたのに、なんともあきらめのいい奴だ。もうひとこと言ってくれたら行ったのに・・・。   

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