エジプト
エジプト(3)・・カイロ Nov 2004
 アザーンの調べに誘われて
朝、アザーンの響きで目を覚ますと、もう今日はエジプト最後の日だ。残り少ない時間を今日は有意義に過ごそう。・・ガイドが姿を現したのは、もう10時過ぎだった。今日は9時からのツアー開始だったハズなのに、いかにものんびりとしたもんだ。時間が無いからみっちりと観光三昧のカイロを約束させたのはお前だろうが。ここでも又、カンニングの竹山が登場してしまった。

最初に訪れたのは、シタデルだ。十字軍の拠点として作られた城塞とのことだが、入場料が40£E(エジプトポンド、1£E=約¥17)、それも外国人だけが対象だ。地元の方々と一緒に入場口で並んでいても、外国人専用の入り口へ追いやられるのがどうも気に食わない。当然、その入場口にはチケット販売所が有り、チケットを購入せざるを得ないのだ。見所満載とのうたい文句だが、ここには入場せずに次に移動だ。

次に訪れたのは、オールドイスラム地区のコプト博物館だ。ここは、イスラム圏では珍しいキリスト教の文化を知るには重要な品々が展示されているそうだ。でも、私を導いたのは昼の礼拝を呼びかけるアザーンだった。エジプト最古のイスラム寺院のガーマ・アムルから響いてくるこの呼びかけに、自然と足が向いていた。
礼拝中の敬虔な信者
何故か私は、このアザーンの響きが好きだ。別にムスリムでもないし、特にイスラム教に興味を抱いている訳でも無いのだが、このアザーンを聞いていると心穏やかになってしまうから不思議だ。
モスクを覗いていると、下足係りをしている人が手招きをしてくれた。この金曜の礼拝真っ最中に異教徒が神聖なモスクに入っていいんだろうか。そんな思いで躊躇していると、更に手招きをしてくれた。
中では、熱心に礼拝を繰り返している人々の姿が有った。そして、頭の真上から響き続けるアザーンの音色。まるで胃の腑の隅々まで染み込んで行くようだ。
敬虔なムスリムは、おでこの辺りに痣ができている。これは、礼拝の際に頭を地面にこすり付ける格好となる為、自然と痣になってしまうんだそうだ。そして、彼らはそれを誇りに感じている。そう、正に勲章なんだろう。日に5回行われる礼拝(実際には1回の礼拝につき1回のお祈りでは無く、礼拝の回数はそれぞれの時間の礼拝により異なる)を延々と繰り返し、信仰を明らかにする姿は、生活の中に宗教が有るのでは無く、宗教が有って初めて生活がある。全てが、イスラム教の上に成り立っていることをつくづく思い知らされる。
 ミイラ館は別料金
考古学博物館入り口博物館の入館前にはX線検査が有り、もちろん写真撮影はダメ。カメラは手荷物係りに預けなければならないという、いかにも厳重な管理を行っていた。

入り口正面では、どでかいラメセス2世の像が我々を迎え入れ、訪れる人々の感嘆を誘っていた。大小の像、副葬品、パピルス文書、棺と多数陳列された展示品の数々は、博物館というよりも、倉庫に保管した物品にそのままラベルを付けてしまったような状態だ。更にはツタンカーメンの黄金のマスクを始めとする特に貴重な品々が、小部屋を設けて別に展示されて、その数の多さはもう何がなんだか判らない状態だ。
そんな小部屋の一つに「ミイラ館」ならぬ「ミイラ室」がある。 入館料40£E、ミイラ展示室は更に別料金が必要で、なんと70£E。実に¥1800程の料金が掛ってしまう計算だ。中にはガラスケースに納まったミイラというよりも、古代人の干からびた遺体が安置されていた。

館内を見学するには、たかだか半日程度で見尽くすのは到底無理な話で、ざっと駆け足で見るだけでも、ゆうに2時間は必要だ。盗掘やら覇権国の搾取やらでかなりの数の遺跡が流出したそうだが、もし、それらが残っていたら24時間営業が必要となるだろう。
 ハンハリーリで迷子
はてさて、最後にナイルクルーズで今回のカイロツアーの締めくくりだ。でも、その前にホテルに戻り、これから機内泊連続2連泊(カイロ→モスクワ、モスクワ→成田の路線が共に夜便)に備え、ゆっくりと熱いシャワーを浴びる予定が・・
 私「水しか出ないぞー」
 スタッフ「ゴメン、ゴメン。ガスの元栓閉めてたもんで」
  う〜ん、やっぱり熱いシャワーって気持ち良い。でも・・
 私「またお湯が出なくなったぞー」
 スタッフ「ゴメン、ゴメン。ガスが切れてしまって」
  う〜ん、やっぱり熱いシャワーって気持ち良い。でも・・
 私「またお湯が出なくなったぞ。ふざけんなこの野郎」
 スタッフ「ゴメン、ゴメン。えーと、今度はと・・」
  いくらカイロでも今は冬。お湯が出ないんじゃ寒いってば。

ハーンハリーリの様子折角シャンプーまでしたのに、ホテルにはドライヤーが無い。中東、北アフリカと乾燥度の高い地域では、ドライヤーって物が存在しないらしく、その言葉すら理解して貰えなかったが、やはりここでも通用しなかった。
濡れた頭を乾かす方法はと・・。ホテル近くに有るメトロが私のドライヤーだ。駅構内がメトロだけあって地下に位置する為か暖かく、髪を乾かすには格好の場所だ。行ったり来たりを繰り返す不審な外国人がここに一人。

ついでにタクシーを拾ってハーンハリーリへ足を延ばすことにした。このスークはかなり大きく、地元の人や観光客でごった返しており、道を行くだけでも骨が折れる程だ。
「これ本物のバビルスね。ほら、こうやって丸めても全く傷付かないし壊れない。ノープロブレム」って手書きの絵がもうボロボロじゃん。それに、紙が皺だらけになっちゃってもう。お前の「ノープロブレム」は、どっかの国の議員の「遺憾の意」と同じで意味無いじゃんか。

メイン通りを歩けば英語や日本語!で声を掛けられるが、一歩横道に入ってしまえば、そこはもうエジプト語しか通用しない世界だ。土産売りをかわすように、どんどんと横道に入っていくと、いつしか元の道に戻れなくなってしまった。道に迷ってしまったらしい・・。まずい、これじゃナイトクルーズに遅れてしまう。
 ナイルクルーズで辱め
クルーズ船には、どこから現れたのかガイドと称するオヤジが一緒に乗り込んで来た。奴は、別に何をするわけでの無く、ただ黙々とバイキング形式のディナーをバクバクと食っているだけだ。こいつの料金も私のツアー料金に含まれているんだろうな。
くるくるこのディナー、ドリンクは別料金らしい。テーブルにグラスは有るが、飲み物らしきものが全く無い。いくらなんでも、ドリンク無しでは食が進まない。
 私「ビール飲んで良い?」(一応ここはイスラム教なんで)
 ガイド「OK,OK問題無い。でも高いからダメ」
 私「じゃ、コーラかなんかは?」
 ガイド「ダメダメ、高いから」
でも、それって私が払うんだよね。ん、もしかしてエジプト人に貧乏人と思われたのかな?隣の予約席では、日本人ツアー客の団体が楽しくビールで乾杯をしている。同じ日本人なのに・・

エイッそうこうしているうちに、こちら特有の濃い顔立ちをした男の歌謡ショーから、今度は更にむさ苦しい男2人のダンスショーが始まってしまった。私の席は舞台のすぐ近くなもんで、食後に目の前でこれをやられたんでは辛い。
まさか、これで終わりってことはあるまいな。そんな不安がよぎった頃、いよいよダンサーの登場となった。ちょっとお腹の出たダンサーだが、さすがエンターティナーだけ有って会場を魅了と笑いの渦に引き込んでくれた。ベリーダンスはさすがに圧巻で、会場のテンションが一気に高まってしまった程だ。
プヨプヨお腹を見ているうちに、鼻の下が伸び伸びになってしまっていたんだろう。ダンサーと目が合うと、手を取られ舞台に連れ出されてしまった。訳が判らないうちに一緒にダンスをする羽目に・・。これって、少なくとも、今年一番の恥ずかしい瞬間でありました。
 バクシーシって何?!
空港へと向かう道、タクシードライバーがしきりにバクシーシを要求して来た。「お前とは、昨日からずっと一緒だ。ちゃんとバクシーシ払えよな」ってな事をソフトタッチで話しかけて来た。なんせ観光客慣れしているだけあって、別段、何かした訳でも無いのに、奴らはバクシーシが少ないと直ぐ文句を言ってくるから手が付けれない。挨拶代わりにバクシーシをいちいちのたまわれたんじゃ、堪ったもんじゃない。
突然(でもないか)、私は英語が全く話せなく話せなくなってしまった。「ん、何?!空港までの料金はツアー代金に含まれているじゃん。他に何か払う必要でも有るっての?それに何を言ってんだか全然判んないよぉ」

バクシーシは本来、イスラム教での「五行」すなわち「信仰告白」「礼拝」「断食」「巡礼」と並んで同列の「喜捨」の一部のハズ。「喜捨」とは富める者が貧しい者へ行う行為であって、我々仏教徒のような外国人にとっては無縁な存在だ。その解釈が捻じ曲げられ、富める物=外国人からは、ボってでも金をふんだくれって考えと、西洋での「チップ」ばら撒き感覚が中途半端に結びついてしまった結果なんだろう。

空港に着いたのはフライトの2時間前で、搭乗手続きが始まる時間帯としてピッタリの時間だった。
さて、ドライバー氏、焦らした効果が有ったのか、小額のバクシーシでも文句も言わず、嬉々として抱擁を交わして来た。それでは、いざ搭乗手続きをば。
 係員「何処に行くの?」
 私「モスクワ!」
 係員「(笑いながら)それって、ターミナル2だよ」
 私「(怒)!」
あの野郎、バクシーシを払わないと思ってわざとこっち(ターミナル1)に着けやがったな!
もう時間が無い。それにしても、たかだか隣のターミナルに行くのに25£E(なぜかここでは=$5)とは足元を見過ぎている料金だ。最後の最後に、またもエジプトの罠にはまってしまった。

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