切り裂かれた「釣りキチ三平の里」・その後(2000年11月)
2000年秋。増田町狙半内地区の最奥部。「釣りキチ三平」を産み育んだ自然のコア
(核心)に相当する森に,断末魔の悲鳴がこだましたのは2年前(1998年)だった。
あれからあの森はどうなっているだろう…。
「整備」の名のもとに行われ,繰り返される「破壊」。自然のなかで暮らし,自然
とともに生きてきた私たちが決して避けて通れない,21世紀に直面する問題を
矢口高雄さんのふるさとより報告する。
(←) @ 林道わきに立ち尽くすブナの若木。燃え盛る紅葉をよそに,なぜかこの木はすっかり葉を落としていた。しかし,枝という枝には,無数の実が残されている。死期の近づいたブナは,樹勢のかぎりを振り絞って全身に花を咲かせ,たくさんの実をつけるという。このブナの樹齢は推定40年くらいか。その根回りは,林道工事によって半分以上が抉り取られていたのである。 |
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(→) A この一角は皆瀬村に食い込んでいるが,皆瀬村民はこの道を利用することはできない。2年前,平鹿農林事務所は「いずれは皆瀬村とも結ぶ予定」と話していたのに,改めて問い合わせると「そういう話は聞いていない。工事の予定もない」という。どういうことだろう。 |
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(←) B のり面に植えられた種子が発芽して,このような「緑」が形成された。2年前,平鹿農林事務所は「種子吹き付けには主にヨモギを用いる」と言っていたが,これは在来のヨモギではない。周辺ののり面を探してみたが,ヨモギが根付いているところはわずかだった。 |
(→) C
「種子は主に牧草を主体にしている。外来のオオチャードクラス・トールフェスク・クリーピングレッドフェスクに,在来のヨモギ・メドハギ・ホワイトクローバーなど。これらを混合して吹き付けているが,土壌によっては根付かなかったり生えないものもある」(農林事務所)。ヨモギやクローバーはまだしも,外来植物を山野に植え付ける感覚はどうにかならないものか。 |
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(←) D おなじみの崩落地。往来する車はごくわずかだから,あわてて修復する必要はない。ただし,急傾斜地に道路が存在する限り崩落は免れないため,業者はコンスタンスに“仕事”にありつくことができる。こうして業者に仕事を与えることが,林道の“ウラの目的”だったりする。 |
(→) E ガスがかかっていたため,増田町の最高峰・大川目山は見えなかった。標高の高さがうかがえよう。有史に残る飢饉には多くの貧民を救った「わらび山」の末路――。 |
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