平成9年 崎山中学校土器制作

野焼きによる土器の制作


崎山貝塚の近くにある中学校「崎山中学校」の2年生は、文化祭を前に土器を野焼きにより制作しました。
その様子を紹介してみます。
土器の制作
2年生では美術の時間を使って粘土をこね、土器を作りました。材料の粘土は縄文土器の作成を町の行事として行っている地区から特別に分けてもらった物で、普通では手に入りません。
制作中の土器制作中の土器
デザインはまちまちですが、それぞれに工夫が見られます。それを、教室の中で1ヶ月以上乾燥させました。2年生41人で約50個の作品を作っています。 乾燥中の土器の数々
燃料の調達
燃料に用意したのは杉、松の端材(宮古ではセッカと呼びます)で、トラック1台分です。これは市内の製材所から購入しました。さらに、わらを軽トラック2台分。これは、学区内の農家から分けてもらいました。
土器を並べる
準備
文化祭の4日前、天候がよかったので、この日実施する事になりました。もちろん実施に際しては、事前に消防署へ届け出を行っています。まず、湿気を防ぐためトタン板を地面にしき、その上に乾燥させた土器を並べていきました。
土器を並べる生徒たち
12時 火入れ
並べた廻りをわらで囲み、燃やします。これは少しずつ熱するためです。この状態で、約2時間ほど焼きました。
藁が燃えている
14時 本格的に焚き始め
生徒たちも加わり、本格的に火を焚き始めました。火力を弱めないよう頻繁に木をくべましたが、大変な高温で苦労します。
生徒たちが火を見ている
このまま炊き続け、19時ごろになりました。いったん家に帰った生徒たちも再び集まり、焚き火を囲んで楽しそうです。しかし、火からは目が離せません。19時30分。生徒たちは帰宅し先生だけが残りました。今夜一晩、番をします。20時に木をくべるのを終了し、自然に燃え尽きるのを待ちました。22時ぐらいには先生だけになりました。 夜、火の回りに集まった人たち

土器の野焼きも夜が明け2日目になりました。今日は
いよいよ土器を取り出す日です。
土器の取り出し
徐々に灰が冷えるのを待ち、12時になりました。いよいよ感激の釜出しです。失敗していないかはらはらしながら灰を取り除きました。ごらんの通り、野焼きは大成功でした。2〜3のこわれたものもありましたがほとんどは大変素晴らしい焼き上がりです。担当の先生もほっとしていました。
できあがった土器の数々
研究を担当した生徒たちが一個一個大切に取り出しました。これらは10月26日の文化祭での展示に使われます。 杯の中から土器を取り出す生徒たち
文化祭での展示
展示された野焼き土器の数々です。なかなかおもしろい作品もありますが、どれもよいできです。
展示された土器の数々
展示作品のいくつかを見てみます。
色合いは遺跡から出土する土器とよく似ています。また、たたいてみると、カンカンと堅い音がします。生徒の作った物は、肉厚のものでしたが、本物はもっと薄手に出来ています。技術力の違いでしょう。
展示された土器展示された土器
縦長の土器縦長の土器。

野焼きを体験してみての感想
 自分たちの手で土をこね、自力で土器を焼く体験を通して、少しは縄文時代の人々の暮らしが分かったような気がします。まず、特別な大がかりな道具がいらないこのやり方だと、私たちのような素人でも身近な生活用品が作れること。また当時の人々は私たちより、もっとゆったりした時間の中で生活していたと思われるので、出土する土器のような、意匠を凝らした芸術的な作品を作ることが出来たのだ。当時の生活にはかなりの余裕があっただろうということ。そして、当時の人々にとっても、土器を作る作業はとても楽しい仕事だったに違いない。おそらくは、競い合ってより美しい物を、より手の込んだ物を作って自慢したり、誉め合ったりしていたのだろうということなどです。