平成11年12月24日 一級河川雄物川水系「成瀬ダム建設論」に替わるより有効でコスト面を考慮した事業実現の要請
内閣総理大臣 小淵恵三様
大蔵大臣 宮沢喜一様
建設大臣 中山正暉様
成瀬の水とダムを考える会代表世話人
21世紀は循環型・抑制型社会へと導く事は、今日では地域住民の常識であり、また希求する自治体の姿であります。しかるに一部の秋田県内町村議会では、全く逆の「開発型」投資の提案をつづけ、40年代の発想からの脱却が出来ないばかりか、国家財政・地方財政の一層の破滅を招こうとしています。
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洪水調節能力において、成瀬ダムの効果がきわめて小さいことは、建設省湯沢工事事務所より当会へ寄せられた回答でも明らかです。
かつ昭和30年代以降完成した既存ダムの洪水調節能力は巨大なものであり、また皆瀬ダムのハイドログラフの示すところは、少量の降水量でも鉄砲水が発生するという、山の荒廃現象を物語っています。いま国に対して提案すべきは、山の広葉樹植林であり、造林杉の間伐事業への思い切った補助拡大(国有林・民有林の区別無く)であります。
これらの仕事は山の保水能力を根本的にたかめ、現在のように「速く動く水資源」を「ゆっくり型」動きへと回復させ、農業などの利水能力を向上させ、河川の生態系にも大きな活力を与えるはずです。さらにこの事業は、地元土建業への需要喚起にも長期の大きな期待ができます。
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広葉樹林の拡大・造成林の育成間伐に、水源函養と自然保全の観点から、思い切った事業予算を設定してください。
2
平成6年は稲作農家にとって歴史的な年でありました。前年の冷害による凶作(県南3郡の減収5万トン)にたいし、大渇水のこの年は前後20年間一番の豊作年となりました(減収700t)。
とおし水(抑制)と、渇水対策4億円の新規投資が行われたましたが、成瀬ダム1600億(当初計画)、水路整備400億計2000億円の計画と比較すれば、コスト面での優劣は歴然としたものがあります。
しかもこの時の4億円の投資のおかげで、今年の旱ばつはさしたる事なく克服出来ました。秋田気象台の資料によれば、当平成11年の秋田県南部地域(成瀬ダム予定地)降水量は6年をはるかに上回る劣悪な状況であったにもかかわらずです。
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ダム計画予算でなく、農業用水のリサイクルや、地下水利用事業へのさらなる補助予算を確保してください。
3
私たちはこの他に、休耕田を溜め池にすることを提案し、政府に対し、そのための土木工事と補助申請を行うよう提唱します。溜め池は、単に農業利水としてだけでなく、この扇状地の水循環をより「ゆっくり型」へ回復させる機能を持ち、地域の自然環境回復への多大の期待も可能です。
この溜め池は、この地域の冬季における生活用水の不足に、抜本的な解決をもたらすはずです。これは現在進行中の上水道計画よりも、はるかに安いコストで問題を解決すると思われます。(当地の生活用水は冬に不足します)
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休耕田を水管理施設とする土木事業に、十分な事業予算を組んでください。
水田農家は現在収入低下と3割減反による水需要の減少の中で、これ以上の開発的負担は出来ないといい、一般住民はますます進む先の見えないお金の浪費が、結局は消費税率引き上げへとはねかえることに恐れ慄いています。
どうか私たちの提案の検討をお願いします。
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