●乳幼児突然死症候群

 それまで特別な病気もなく元気だった赤ちゃんが眠っている間に突然死亡する乳幼児突然死症候群。家族に与える精神的ショックは計り知れません。

 この乳幼児突然死症候群は、乳児死亡が激減した先進国においては医学的に問題になっている死因の一つです。

 日本では、その数は年間5百ないし6百人で、その8割は生後6ヶ月までであり、1歳以降の発生は1割以下となっています。新生児期を過ぎた乳児死亡の4分の1を、この乳幼児突然死症候群が占めています。

 なぜ、それまで元気だった赤ちゃんが眠っている間に突然亡くなるのか、という点に関しては、睡眠時の無呼吸からの回復の遅れということで説明されております。

 乳児の睡眠中の無呼吸は、正常なこどもでも起こり得るものですが、普通は、呼吸しないことによって血液中の酸素が減ったり、炭酸ガスが増えると脳幹部というところにある呼吸中枢を刺激して、また呼吸が再開するわけです。

 ところが、何らかの理由によって呼吸中枢が反応しないと、無呼吸からの回復が遅れて、さらに血液中の酸素の量が減少して死亡すると考えられております。

 乳幼児突然死症候群を起こす誘因として、いくつかのことがあげられております。

 まず、うつ伏せ寝の方が仰向け寝よりも発生率が高くなっています。また、人工栄養児の方が母乳栄養児に比べて発生率が高く、母親の妊娠中の喫煙、赤ちゃんの周囲にタバコを喫煙する人がいることも危険因子としてあげられています。それから、暖め過ぎも良くないと言われております。

 ですから、乳幼児突然死症候群をできるだけ少なくするために次のような育児環境に心掛けて下さい。

 @仰向け寝で育てましょう。

 Aできるだけ母乳で育てましょう。

 G妊娠中にタバコを吸わない、赤ちゃんの周囲でタバコを吸わないようにしましょう。

 C赤ちゃんを暖め過ぎないようにしましょう。

 Dできるだけ、赤ちゃんを一人にさせないようにしましょう。

 実際に、うつ伏せ寝をやめることによって、大幅に乳幼児突然死症候群の発生を減少させ得ることが世界各国から示されています。

小笠原芳彦(水沢市・小児科医師) 胆江日日新聞社より