●子供のストレス

 心理的な葛藤は、肉体的な機能の変化を起こします。これは、心身症と呼ばれるものです。特定の種類の葛藤や心理状態が、それらに対応する心身症を引き起こすのではなく、どんな種類の感情のストレスでも心身症を伴ってくる可能性があります。どのような種類の心身症を引き起こすのかは、生まれつきの脆弱(ぜいじゃく)性や環境の要因によって決められます。

 精神的葛藤に対するヒステリーのような表現が急にあらわれます。それは随意(ずいい)筋や感覚器官にみられ、目が見えない、物が二重に見える、歩行の異常、手足の麻痺(まひ)などを訴えとすることが多いのです。

 しかし、神経学的な異常は見られず、例えば腱(けん)反射や光に対する瞳孔の反応は、患者の訴えから推測される反応とは異なっています。長く継続する不安は、自律神経の異常を起こし、臓器の機能に対して影響を与えると考えられます。

 心身症の子供への対処の仕方には、いくつかの一般的な原則があります。

 1.そのような子供たちの症状は、彼等の意識的な制御によるものではなく、演技でも、仮病でもない、ということです。彼等が訴える痛みも苦痛も現実のものなのです。

 2.両親に、病気の原因に感情の問題が関係することを早めに説明すること。

 3.子供に対する心理療法と共に、両親のカウンセリングも必要となる場合があること。

 このような症状のうち、行動の異常といわれるものには、次のような種類があります。

 ▽指しゃぶり…乳児期にみられるものは、ミルクを吸う反射が習慣化したものであったり、空腹の表現と考えられます。しかし、2歳以降のものは、手持ち無沙汰、不安、不満などが原因となって習慣化することが多く、ぼんやりしている時に現れやすく、たいてい3歳〜6歳までの間に自然に消失します。親が指しゃぶりの行為だけを気にしていると、子供はそれを感じ取って、かえってわざとしゃぶったりすることが多いようです。

 ▽爪かみ…4、5歳ごろに出現し小学生、特に敏感で緊張しやすい小児に多く、なかなかやめられずに成人まで続くこともあります。指しゃぶりが、ぼんやりしている時に起きやすいのに対して、緊張や不安が引き起こされる場面で出やすいといわれます。

 ▽チック…チックは、意識せずに起きる運動の一種で、突発的に繰り返して一部の筋肉の収縮が起きるものです。初めにみられるのは、まばたきが多く、顔しかめ、首振り、肩すくめなど顔より上の部分に起きることが普通で、奇声や汚い言葉を発する場合もあります。

 男子によく見られ、不安や緊張している状態では多くなり睡眠中には見られなくなります。ある程度の間であれば、一時的だけれども意識的に制止することができるという特徴があります。

 心身症と考えられていましたが、そうではないという意見もあるようです。大部分のチックは1年以内に自然に治りますが、奇声や汚い言葉を発したり、体や下肢のチックがある場合には治りにくいと言われます。

檜山陽司(水沢市・小児科医師) 胆江日日新聞社より