●こどもの喘息(ぜんそく)

 例年になく長く暑かった夏も過ぎて、涼しくなりかけた9月末から10月にかけて、こどもさんが急に咳き込み始め、ゼイゼイして病院通いをした方も結構多かったのではないでしょうか。

 喘息の発作で呼吸が苦しくなるのはなぜでしょうか。それは、空気の通り道、気管支が敏感すぎるために、一時的に狭くなり、空気の通りが悪くなって体に必要な酸素を十分に血液中に取り込むことができずに苦しくなるのです。

 気管支が狭くなる要因は3つあります。1番目は気管支の平滑筋が収縮するためです。2番目は炎症を起こすために粘膜が厚くなって、その分気管支が狭くなります。3番目の要因は痰(たん)が出てきて気管支をふさぎます。この3つの要因で気管支が狭くなり呼吸が苦しくなるのです。

 ゼイゼイ、ヒューヒュー音がするのは、その狭くなった気管支を空気が通る時の音です。

 気管支の狭くなる程度によって当然症状も違い、その程度が軽ければ少しゼイゼイするが、ほぼ普段通り遊んだりお話したりできます。これが小発作です。気管支の狭窄(きょうさく)の程度が強いと当然呼吸困難の程度もひどくなり、外で遊ぶことはもちろん、会話さえもできなくなったりします。この状態が大発作で、中間が中発作です。

 軽い症状であれば、コップ1杯の水を飲んでゆっくり呼吸するだけで落ち着くこともあります。呼吸困難がひどい時には薬の助けを借りたりしなければなりません。まず狭くなった気管支を広げる気管支拡張剤や、痰を出やすくする薬を使います。喘息の発作の時に咳をするのは、それによって痰を出し、気道をあけて空気の通りを良くする意味もあるのです。

 気管支拡張剤は、内服薬のほかに吸入でも使いますし、点滴液の中に入れても使います。喘息の発作で苦しくなると、水分も十分に摂れませんし、吐く息の中に失われる水分も多くなります。

 また、しばしば感染を伴って発熱もみられますので、そうすると発汗も増え、その分水分を十分に補給してあげないと、痰も固くなって出にくくなり、ますます呼吸が苦しくなります。(発作がひどい時には、酸素吸入や、気管支の炎症を抑えるための副腎皮質ホルモンの投与なども行います)

 どんな時に発作が起きやすいのでしょうか。天候の変化、例えば、秋口、春先、雨が降る前などは結構発作が起きやすいですし、カゼなど感染に伴った喘息発作もしばしばみられます。

 こどもの喘息は、ダニや家の中のほこりにアレルギーをもっている場合が多いのですが、そういうこどもが、それらを大量に吸い込んだ時にも発作が起こります。ソバなど特定の食物で喘息の発作が誘発されることもあります。肉体的疲労や精神的ストレスが誘因となって発作が起こることもあります。(激しい運動をした時に起こる運動誘発性喘息もあります)

 ダニやほこりなどにアレルギーのある喘息のこどものいる家庭では、布団にも直接掃除機をかけて、環境整備を心掛けましょう。もし、発作に精神的ストレスが関係しているようであれば、それを取り除いてやる気配りをしましょう。

 喘息のこどもの数は昔に比べ数倍に増えています。気道過敏性という体質に由来する慢性疾患です。成人まで持ち越すこどももいますが、思春期までに症状がほとんどなくなる方が多いのです。気持ちを前向きにもつて、体調が良く発作のない時は、水泳などで積極的に体を鍛えましょう。

小笠原芳彦(水沢市・小児科医師) 胆江日日新聞社より