●ひきつけた時

 ひきつけとは、けいれんのことです。けいれんには、手足をガクガクさせる場合と、ガッチリと固まってしまう場合の2種類があります。そのいずれの場合でも、多くは唇や顔全体が紫になり、目が上を向いてしまいますから、だれもがとてもビックリします。

 子供のけいれんの原因の大半は熱性けいれんと言って高熱、それも急に熱が上がる時に起きるもので、乳児から5歳ぐらいまでの子供によく見られます。

 初めてのけいれんの時は、とにかく一番早い方法で病院へかけつけましょう。家から病院までの距離によっては、必ずしも救急車が一番とは限りませんから冷静に判断して下さい。

 ただ、幸いなことに熱性けいれんは短い時間で自然におさまることが多く、いきなり動かさない方がよい場合もありますから、次回けいれんが起きた場合の対応を、主治医の先生からよく教わって下さい。

 けいれん予防の坐薬(ざやく)を使うとか、予防のための飲み薬を必要とすることがありますが、その子によって違いますから、主治医の指示に従って下さい。

 けいれんが始まった場合、できればけいれんがどのくらい続いたかを時計で計ると後で役に立ちます。一応3分程度を目安として、3分を超えてもけいれんが続いていたら、一刻を争って病院へ。けいれんのさなかに吐くことがしばしばあります。けいれんが止まらないまま動かさざるを得ない時は、なるべく顔を横に向けて、吐いたものをのどに詰まらせないようにして下さい。衣類がきつかったらゆるめ、周囲に危険なものがあったら遠ざけて下さい。

 けいれんの最中は意識がありませんから、呼んだりたたいたり揺さぶったりするのは無意味です。有害なことさえありますから、気持ちを抑えて下さい。

 「舌を噛まないように口に物を入れなさい」と言う方が結構いますが、口には物を入れないで下さい。ケガをさせたり窒息させる危険の方がはるかに大きいのです。舌を噛んで大変なことになった子を、私は見たことがありません。

 熱性けいれんがある子には熱さましが必要ですから、一度でも経験した子の家庭には熱さましを必ず何回分か常備して下さい。最も使いやすいのは坐薬でしょう。もちろん薬局で買っても結構ですが、年齢や体重にふさわしいものを用意して下さい。でも、一日に4回も5回も使うのは考えもの。また大人用の坐薬を適当に切って子供に使うのは絶対にいけません。

 熱さましには多くの副作用がありますから、やはり主治医に相談して、適切な熱さましの使い方を心掛けて下さい。なお熱がなくても起きるけいれん(てんかんなど)は、別の対処が必要ですが、今回は触れません。

半井 潔(水沢市・小児科医師) 胆江日日新聞社より