●自家中毒症といわれましたが・・・

 2歳から10歳ごろまでの小児にみられる嘔吐(おうと)を繰り返す病気の一つです。神経質で、感染(かぜ)過労、神経緊張、精神高揚などを誘因として、嘔吐を反復し、アセトン血性、ケトージスという状態となります。周期性嘔吐症、アセトン血性嘔吐症、自家中毒症とも呼ばれます。

 6歳以下に多く、性差はなく、季節的には冬から春にかけて多いようです。発症の回数は年3〜4回のことが多く、自律神経の不安定な小児でも、思春期までには消失します。

 子供の環境、栄養状態がよくなり、早期受診、輸液療法などの進歩もあり、最近では重症例は少なくなりました。嘔吐が治ると、短時日のうちに食欲が良好となり、適切な食物をとると全身回復します。

 一般に経過良好ですが、両親、祖父母などまわりの人たちが、おろおろ狼狽(ろうばい)すると症状が悪化することがあるなど言われました。

 発症しやすい子がいて、かぜぎみとか熱を出すと簡単に嘔吐がはじまる、いわゆる吐きやすい子に親が早く気がつけば、甘い水分などを少しずつ食べさせると、ひどくならなくて済むことがあります。嘔吐を繰り返すときは、口から摂ることを一時停止、心身の安静に心掛けて治療を受けるなどします。

 嘔吐が止まりましたら、湯ざまし、砂糖水、イオン飲料などの水分を1口、2口、30ccくらいと、ゆっくり与えはじめます。喉が渇いているときには水分を欲しがり、おいしいので、 200 ccぐらいゴクゴク飲んでしまい、冷たさと量の多い刺激で、すぐに戻って嘔吐してしまいます。お湯で調整した甘い片栗粉を一さじ、一さじフーフー吹きながら与える風景などもほほえましいと思います。

 次に脂肪の少ないおかゆ、野菜実だくさんの味噌汁(スープ)などを経て、通常の食事に切り換えられたらよいと思います。

 予防は規則正しい日常生活、心身の鍛練に心掛け、過保護、過干渉にならないようにします。

 また、嘔吐症=(イコール)アセトン血性嘔吐症ではありません。嘔吐には、ほかの心身症、感染症から、虫垂炎、腸重積のような放置できない循環的疾患と、いろいろあります。ご注意下さい。

石川和子(水沢市・小児科医師) 胆江日日新聞社より