●いけないものを食べた時

 子供は食べたり飲んだりしてはいけないものを平気で口にします。3歳ぐらいまでの子供は、口に入る大きさの物はなんでも食べてしまうと考えて、身の回りを見直してみて下さい。

 何と言っても多いのはタバコ。ちょっとなめた程度なら心配ありませんが、一本全部食べたとか、どれだけ食べたか分からない、という場合は急いだほうがよいでしょう。子供のいる家庭では、「夕バコを見えない所に置いて、見えない所で吸う」のではなく、「家にタバコを置かない」ようにしなければいけません。子供は大人よりも賢いので、必ず見つけてしまいます。

 ほかには洗剤や漂白剤、化粧品、大人用の薬(血圧の薬や精神安定剤など)、お酒などが危険です。これらの多くはタバコと違って生活必需品ですから、家に置かないわけにはいかないので、手が届かないように注意して下さい。

 それから石油・ガソリン類も大変危険です。石油類を肺に吸い込むと、重い肺炎になります。絶対に灯油のポンプをポリタンクに突っ込んだままにしないこと、簡単に吸い上げられる電動式ポンプは特に注意です。

 食べたり飲んだりした量にもよりますが、以上挙げた物の多くは、胃腸から吸収されると、いろいろな中毒症状が出て、時には生命にかかわることもあります。胃洗浄といって、なるべく早く洗い出してしまう治療がしばしば必要になります。

 胃洗浄が有効なのは食べてからせいぜい3時間以内ですから、できるだけ早く病院へ。タバコの残りや、洗剤のボトルなど「証拠品」を持って行くことを忘れないで下さい。「指を口に入れて吐かせること」と書いてある本がありますが、かえって危険なことが多いので、やめましょう。

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 ビー玉、ボタン、硬貨、プラスチック類(とがっていないもの)などの固形物は、たいていの場合、便と一緒にお尻から出てきますが(5百円玉はまず出てきません)、出るまで2週間ぐらいかかることもありますから、かかりつけ医に相談することが必要です。

 でも、さしあたり危険性は大きくないので、もし夜に飲んでしまった場合、苦しがったり痛がったりしなければ翌朝病院に行っても大丈夫です。

 ただし例外があって、ゲームなどに使われているボタン電池は飲んでからしばらくすると、溶け出た内容液のために胃腸に穴があいてしまうことがありますから、待ったなしです。電池が胃の中にあるうちなら取り出すことができますから、体の左側を下にする姿勢をとらせて(電池が胃から出てしまわないようにするためです)急いで病院に相談して下さい。

 それからヘアピン、画ビョウなどとがった物の場合も、様子をみようとしないで、早期に相談したほうがよいでしょう。

 次は「食べてはいけないもの」ではありませんが、小さな子供は時々気管の方に物を飲み込んでしまうことがあります。その代表はピーナツ・豆頬です。気管支に豆などがはまってしまったら、専門家にとってもらうしかありませんが、もし豆類を食べていて激しくむせたり、咳き込んだら、まずかかりつけの先生に相談しましょう。

 魚の骨をのどにひっかけることもあります。のどや扁桃腺にサバやニシンなどの骨が刺さって来るケースは珍しくありません。大事になることはめったにありませんが、小さい子供に与える魚は、骨をきちんと取り除くようにして下さい。

半井 潔(水沢市・小児科医師) 胆江日日新聞社より