●緊張型頭痛

 脳に病気がないのにもかかわらず、慢性的につらい頭痛が繰り返して起きるものは「機能性頭痛」といわれています。前回のテーマであった片頭痛、今週のテーマである緊張型頭痛、さらに群発頭痛はこの機能性頭痛に分類されます。頭痛の時はどこが痛んでいるのか、よく話題になりますが、頭部の組織では「痛みを感じるもの」と「痛みを感じないもの」とがあります。たとえば頭がい骨や脳自体は痛みません。頭の内外で痛むのは血管、硬膜、くも膜、神経、筋肉などです。このために局所麻酔でも脳の手術が可能なわけです。さて今週は緊張型頭痛の話です。


 ■頭痛の性質

 緊張型頭痛の痛みは、ほとんどの場合、両側性か頭全体に認められます。頭痛は後頭部を圧迫される感じ、頭全体に鉛でも入ったように重い感じ、はちまきを強く巻いた感じ、常にヘルメットをかぶっている感じのように「頭重感」「圧迫感」頭の周囲に「締めつけ感」として感じられる事が多いようです。

 痛みの程度は鈍痛で吐き気を伴うことがあっても、吐くことは少ないようです。「片頭痛」と違い体動や歩行で頭痛が増強することはなく、体を動かした方がかえって気がまぎれて頭痛を忘れることがあります。頭痛の持続時間は30分から1週間位続き、慢性的に毎回一日中続く人もいます。軽い場合には精神的ストレスや疲労で夕方になると頭痛が出現する事が多いようです。頭痛に伴う症状としては、眼の疲れ、耳鳴り、めまい、肩凝り、疲労感などがあります。


 ■緊張型頭痛のメカニズム

 血液の流れが悪い状態で筋肉が長い間働くと、乳酸やピルビン酸といった痛みを起こす物質が筋肉内に出てきます。この物質が筋肉を刺激して痛みが生じます。そして筋肉が骨に付く部分に神経が通っているので痛みを強く感じるのです。また、後頚部(けいぶ)の筋肉の異常な持続的収縮はここを突き抜けて後頸部に向かう後頸神経を締めつけ、神経の筋肉からの出口で強い圧痛を引き起こしているのです。  


 ■頭痛を起こしやすい人

 頭痛をおこしやすい人は体型や首の骨、血圧、貧血、ストレスなどが関係しているのです。

(1)体型と首の筋肉
 頭の重さは4kg以上あります。私たちは日常頭の重さを意識してはいません。しかしこれだけ重いものを首の上に乗せているのです。頭痛を起こしやすい人の体型は頭の重さに比べて首がすらっと細長いという報告があります。実際に頭痛に悩まされている患者さんはこういった首の長い、色白の女性が多いと思われます。体型を変える事は難しいのですが、体操によって首の筋肉を鍛えることは重要です。

(2)低血圧と貧血
 筋肉の働きがよくても、十分な酸素が供給されないと痛みの物質が出てきます。低血圧の人がうつむき姿勢をとると血管の圧が低いので、固く収縮した筋肉に押されて血液の流れが悪くなります。貧血の場合は血流が保たれていても酸素不足に陥りやすいのです。

(3)うつむき姿勢
 姿勢を維持するために筋肉が収縮すると血流が低下します。同じ姿勢を続けるといつまでも低下したままで、すぐ凝りが起きます。しかし、意識的に筋肉を収縮させると血流は増加します。時々、背伸びをしたり、首を回したり、体操をすることが大切です。

(4)枕(まくら)
 枕は高ければ高いほど首の筋肉の緊張が強くなります。できれば、バスタオルを2〜3回おった程度の低くて大きな枕を使用するのがよいでしょう。


 ■治療

 以上のような増悪因子を取り除くこと、つまり精神的ストレスや身体的ストレスには気分転換や気晴らしが必要です。また体をほぐすようなストレッチ体操や軽い運動も効果があります。気分転換の方法は個人によって違いますのでいろいろ工夫が必要です。どうしても直らない場合には筋弛緩剤や鎮痛消炎剤などを服用します。


  緊張型頭痛は「ストレスから肩・頸のこりとともに頭全体が痛くなる」と簡単に考えられてきました。しかし、原因が単純にストレスと言えない場合も少なくありません。特に最近目立つのは、緊張型頭痛と思っていた患者さんに頸椎(けいつい)の変化を認めることです。毎日のように頭痛がする場合は元になる病気があるかもしれません。主治医に相談することをお勧めします。

冨田 幸雄(水沢市・脳神経外科医師) 胆江日日新聞社より