●Q&A(3)
★質問★
毎年行われている結核検診ですが、検診後、再検査や精密検査を受けるようにという通知をもらう人が多すぎるように思います。どのような手順で検診結果を出しているのか教えてください。また、検診のスタッフ体制についても伺います。(水沢市・男性)
★回答★
ご質問にお答えします。私は水沢医師会肺がん検診委員会で事務局的な役割を担当している者ですが、質問の内容は、肺がん検診(=結核検診)が実際どのように行われているのかという点と、医療機関での二次検査(精密検査)に関する点のふたつに分けられるようですので、それぞれについてお答えしたいと思います。
★肺がん検診のシステムについて★
検診の目的は第一に肺がんの早期発見ですが、もちろん結核など他の肺疾患についても同じように真剣にチェックしています。肺がん検診委員会は現在、水沢医師会の16名の医師で構成されています。委員選抜の基準の重要なポイントは胸部X線写真の読影能力に優れていることであり、主に呼吸器を専門とするベテラン医師がこれにあたります。したがって若い新米の医師は委員には含まれておりません。検診車で撮影される間接X線写真は年間3万枚弱で、16名の検診委員が2人ずつペアになり、計8組で分担して撮影された写真の読影にあたっています。
まず病変の見逃しをできるだけ減らすため、ペアの2人が別々に読影する二重読影(ひとつのX線写真を2人が別個に見てチェックする)を行います。さらにこの二重読影でチェックされた人の過去の検診の写真を引っぱり出してきて(以前は各市町村からそのつど前の写真を貸し出してもらっていましたが、昨年からは医師会で保管しているMOディスクから呼び出せるようになりました)2枚以上の写真を並べ、二重読影でチェックした部位の比較検討(比較読影)を行っています。以前の写真と変わりがなければ(例えば古い結核の痕や肋膜の癒着など)それで終了となりますが、前と比べて大きくなったり増えたり、あるいは前には無いのに新しく影が出てきたといったような変化のある人だけが精密検査の対象となります。
この最終判定は医師会から各市町村に届けられ、みなさんのところへ通知されることになります。このようにみなさんが検診車で撮影を受けてから検診結果の通知をもらうまでの間に、多くの時間と労力が費やされていることを心の片隅にでも置いていただければ幸いです。
やたらと再検査の多い年があったとのご指摘がありましたが、どれくらいの数を要精密検査としてチェックするか(要精検率)は各読影者・各ペアごとにある程度の差が出るのは避け難いことと思っています。ただし、あまりにもその開きが大きいと検診自体の信頼性にかかわる問題となってきますので、定期的に読影ペアの組み替えを行い、ペア間のチェック率の凸凹が出来るだけ少なくなるように努力しています。また要精検率を2%台に抑えましょうというコンセンサスが委員会の中で得られています。
★医療機関での精密検査について★
精密検査に関しては、基本的にみなさんが受診された医療機関におまかせしています。私たちが最も恐れるのは病気を見逃すことです。これは検診委員だけではなく各医療機関のお医者さん全員にも共通した思いでしょう。X線写真にちゃんと写っているのにそれを見逃してしまうことほど恐ろしいことはありません。
CTスキャンは普通の胸部X線写真と比べて数十倍精度があるといわれています。普通の写真ではあるかないかはっきりしないようなごくかすかな影や心臓の裏側などの非常に見えにくい場所もCTでははっきりと鮮明にとらえることが出来ます。ですから、念のためにCTをとりましょうというのは決して間違った考え方ではないと思います。
私どもの病院では週に1回、検診でチェックされて来院された方たちのレントゲン写真を集めて検討会を開いています。初診時に診察室のその場で結論を出すのではなく、見逃しを防ぐために複数の目で見て判断を下しましょうということです。明らかに心配のない影(例えば乳首が写っているなど)ということもありますが、やはりちょっとでも気になる所があるとCTをとってもらうことになる場合が多いのはこのような理由からです。私見ですが、将来は現行の間接写真ではなくCTによる肺検診の時代が来るのではないでしょうか(現時点では費用と撮影時間の面で問題あり)。
年間に10名前後の肺がんの人が、また5〜8名の活動性肺結核の人が毎年コンスタントに見つかっています。この検診は平成元年から始まりましたが、11年度までの11年間で合計212名の肺がんを見つけています。その内の123名の方が早期(I期)で見つかっており、追跡調査の結果ではその中の72名の方が今も生存しているとのことです。
以上述べてきましたように、検診の精度管理は厳しく行われております。安心して毎年肺検診を受けて頂きたいと思います。
勝又宇一郎(水沢市・内科医師) 胆江日日新聞社より