●更年期障害(2)

 前回は「更年期障害」の原因とその症状について、また治療について少し触れましたが、今回はさらに詳しく「更年期障害の治療」について述べさせていただきます。

 治療の基本はホルモン治療と対症療法ですが、薬物治療のほかに運動療法とか作業療法や心理療法も考えに入れなくてはなりません。


 ★薬物療法★

▽対症療法…肩が凝ったり腰が痛い場合に湿布をするとか痛み止めを服用する、また、イライラしたり眠れないときなど精神安定剤とか睡眠薬を服用するといったものがそれに相当します。

▽ホルモン療法…加齢によって分泌が少なくなった女性ホルモンを投与して補正するという方法で、今、世界でもっともポピュラーに行われている方法です。日本では症状が出てから治療しますが外国では30歳代後半から老年にいたるまでいわゆる「HRT」(ホルモン補充療法)として治療されています。

 「HRT」をもう少し詳しく説明すると、これに使われるのは女性ホルモンの中の「エストロゲン」といわれるホルモンです、この作用には更年期障害の治療効果のほかに、結果的に高脂血症とか骨粗しょう症の治療・予防効果があります。

 エストロゲンの発がん作用が問題になったこともありましたが、微量であり、またエストロゲン単独療法のほかにプロゲステロン(黄体ホルモン)、男性ホルモン(アンドロゲン)との混合剤を使ったりしますし、医師から処方を受けている限り定期検査をしますので心配はありません。

▽漢方療法…即効性は無いものの漢方療法にも対症療法的なものが多く、西洋薬とはだいぶ作用機序が違います。一般的には当帰芍薬散とか柴胡桂枝乾姜湯・加味逍遥散などが処方されます。さらに西洋薬との併用などさまざまの処方が行われます。


 ★非薬物療法★

▽針灸・マッサージ等によるもの…この方法は主として肩こりや腰痛の緩和の他に、「ツボ」に適正な針・灸を施行することにより自律神経に対し良い影響を与えるといわれるが詳しいことはわかっておりません。

▽カウンセリング等による対話心理療法等…これは専門のカウンセラーによって行われますが患者は家族との対話が少ない例が多く、また何かに不満を持っているということが多いのでまず聞く事から始まるとされています。カウンセラーのトレーニングを受けていない医師でも話し相手として良く話を聞いて励ましただけで「スッキリしました」といって帰っていく場合もあります。もちろん根本的な治療にはならない場合もありますが、こういう患者に必要なのは家族とまわりの理解と援助であり、発症のきっかけの種を育てないという努力が必要と思われます。

▽運動作業療法…60〜70歳代になってもはつらつとして仕事が楽しくて仕方ないとか趣味に打ち込んでいるということを良く聞きます。そういう方は自分でストレスを発散する自己管理能力にたけた人というべきで、知らない間に更年期を乗り越えているものと思われます。ストレスをためない、または発散させる何かをやるというのも症状を忘れさせる方法として良い事と思われます。

 そういう意味ではスポーツにうち込むのも良いでしょうが、それ程体力を使わない日本舞踊・社交ダンス・カラオケとかも良いと言われています。


 ★まとめ★

 これらの治療方法は単独で行うことはまれで、いろいろとその人にあった療法を組み合わせて治療を行います。更年期は長い人生の間の通過点です。しかし不快なその時期をいやな思いをして通り過ぎるのを待っている事はありません、症状が現れそうだと思ったら積極的に治療してQOL(クオリティー・オブ・ライフ)を高める努力をするべきだと思います。 

小見 克夫(水沢市・産婦人科医師) 胆江日日新聞社より