●増え続ける乳がん
★定期的自己検診と乳がん検診受診の徹底を★
乳がんは増加の一途をたどっており、今から25年前である昭和50年の全国推定発生数は1万人でしたが、平成10年では約3万人と3倍に増加しています。われわれの病院でも平成10年までは年間20例前後であった手術例が、平成11年には29例、そして12年は9月までにすでに33例と2年前の2倍に達する勢いをみせております。さらに、ここ岩手県は乳がんの死亡率が全国5番目にランクされており(平成10年度)、対策が急務と考えております。
乳がんの発見のきっかけをみると、大部分が乳腺(せん)の腫瘤(しゅりゅう)に気付いて医療機関を受診して診断されています。乳がんの治療成績の向上のためには早期診断、すなわち乳がんを腫瘤が小さいうちに発見することが最も重要であります。乳がんは体表にあるため、胃がんなど体の中にある臓器のがんと異なり、自分で発見できる数少ないがんの一つです。ぜひ定期的に自己検診を行ってください。
年代的には乳がんは30代から増加しますが20歳代の発症もまれでありませんので、若いうちから自己検診をする習慣を付けてください。自己検診を定期的に行っていた例の発見乳がんのしこりの大きさが、自己検診をしていなかった例に比較して小さかったというデータもあります。そして自己検診をして何か異常がありましたら、近くの医療機関を受診してください。
がんはむしろ無症状の場合が多いですから素人判断は危険です。自己検診の具体的方法のポイントは、反対側の指をそろえて指先の腹でろっ骨に沿わせるようにして乳腺(せん)を触ることです。つまむようにするのは適当でありません。詳細のパンフレットは保健センターにありますのでお問い合わせください。
乳がんの成績向上のもうひとつの戦略は検診です。検診に関してはその効果の科学的裏付けが乏しいとする意見もあります。しかし、われわれの病院では平成12年1月〜10月の間にすでに8人が検診を契機として乳がんが発見されており、さらに自己検診を含め早期発見に向けた啓もう活動の場としてや、乳腺に異常を感じている人の受診のきっかけとなるという意味もあります。年1回の受診を心がけてください。12年度の水沢市の乳がん検診は6月〜9月で終了し、総計で3,133人が医療機関での検診を受け、現在結果の集計が行われております。
検診を受けそびれてしまった方を対象に追加の検診を毎年数日間水沢市保健センターで行います(水沢市に住所があり、30歳以上の人、受付は午後1時〜1時30分まで、費用500円)。ぜひ御参集ください。問い合わせは、水沢市保健センター TEL0197(23)4511まで。
北村 道彦(水沢市・外科医師) 胆江日日新聞社より