●糖尿病の治療(4)
糖尿病の治療の基本になるのが食事療法、運動療法です。そして、場合によっては薬物療法を行う事が必要です。今回は運動療法、薬物療法について話します。
★運動療法★
適度な運動を行うと、筋肉の中のグリコーゲンが消費され、同時に血液中のブドウ糖が筋肉に取り込まれて血糖値が下がります。また運動する事でインシュリンの働きがよくなるので、さらに血糖値が下がり、インシュリンを節約できます。そのほか、肥満を予防したり、血液の循環をよくし、心肺機能を高めたり、ストレスを解消するのにも役立ちます。
運動療法を始める時は、必ずメディカルチェックを受け、運動しても差し支えないかどうかを調べます。そして、運動量や方法についても、医師の指導に従う事が大切です。もし、やり方を間違えてしまうと、かえって症状を悪化させてしまう事にもなりかねません。
無理なく、一人でも、どこでもできる運動として、ウォーキングや自転車、室内での自転車こぎがよいでしょう。短時間ですむ全身運動としては、水泳が理想的です。そして、楽しくできて、継続できる運動を選びましょう。運動を始めて十分位経過すると、血糖値が下がり始めます。運動は食後1〜2時間後に少なくとも20〜30分間は続ける事が必要です。空腹時に運動すると、薬物療法を行っている人は、低血糖に陥る事があるので避けましょう。また体調が悪い時は、決して無理せず、迷わず運動を中止する事が大切です。
運動量は、少ないと効果がなく、多すぎると害になる事があります。目安としては、ウォーキングの場合、一日7千から1万歩が目標です。運動の強さは、脈拍数(心拍数)を目安にして、自分に合った強度を見つけます。運動をして、もうこれ以上するとくたびれて倒れてしまう強度を100%とすると、糖尿病の運動療法としてすすめられるのは40〜60%までの強度です。
★薬物療法★
薬物療法は、経口血糖降下剤の服用とインシュリン注射に大別されます。経口剤は、基本的には食事療法だけでは血糖が十分にコントロールできない2型糖尿病の人に用いられます。経口剤では、古くからスルホニル尿素剤とビグアナイド剤が使われています。最近はさらにαグルコシダーゼ阻害剤とインシュリン抵抗性改善剤が加わりました。経口剤の服用に際しては、患者さん自身も薬の名前や効用、副作用などをよく知っておく事と、服用のしかたも、医師の指示を守る事が大切です。
インシュリン注射は1型糖尿病の人には不可欠ですが、2型糖尿病の人にも必要な場合には用います。たとえば、肺炎などの感染症にかかったり、妊娠中や手術を受ける場合など、一時的に厳密な血糖のコントロールが必要な時や経口剤が効かなくなった場合などです。
インシュリン療法をうまく行うためには、血糖の自己測定が役に立ちます。自己測定値を参考にインシュリンを調節し、血糖値を上手にコントロールしていくのです。注射は患者さん本人(幼児の場合は家族)が行います。最近はペン型の注射器も普及し、簡単にできるようになりました。注射は、腹部、大腿(たい)部の上半分または上腕の外側、臀(でん)部の皮下に行います。注射の時間は、ふつう、食事の30分前です。
以上、糖尿病の治療についてお話してきましたが、今のところ糖尿病を治す特効薬はありません。しかも慢性の病気ですから、地道に長時間にわたって食事療法、運動療法を続けなければなりません。どうしても中ダルミが心配です。そんな時、民間療法などで糖尿病が快方に向かうという話を聞けば、試してみようと思う人は多いでしょう。主治医から処方された薬をすべて止めて民間療法を行ってみたり、処方された薬に加えて民間療法を併用したりする人がいます。しかし、自己判断でインシュリン注射を中止して病状が悪化したり、主治医の処方薬と民間療法の薬剤の飲み合わせが悪く、症状を悪化させるような事も起きています。民間療法を試そうと思っている人は、正直に主治医に話し、相談して、対応を決める事が大変重要です。
糖尿病は、慢性の病気であり、しかも全身の病気です。短期間だけ薬を飲めば治るというものではありません。ひとたび発症すれば、一生つきあう覚悟が必要です。糖尿病を正しく理解し、よりよい生活習慣を身につける事が糖尿病克服の秘訣(ひけつ)と思われます。
鈴木 密雄(水沢市・内科小児科医師) 胆江日日新聞社より