●糖尿病の治療(3)

 糖尿病治療の目標は、健康な人とかわらない社会生活を送れるようにする事です。そのためには血糖値をできるだけ正常に近づけ、代謝異常を改善し、糖尿病から起こる合併症を防がなければなりません。また合併症がすでにでている場合は、進行を抑える事が重要です。糖尿病の治療のポイントは、糖尿病から起こる合併症をいかに防ぐかで、血糖値が正常に近づけば近づくほど、合併症の起こる割合は少なくなります。

 糖尿病の治療の基本になるのが、食事療法、運動療法です。そして、場合によっては薬物療法を行う事が必要です。またそれと同時に、血糖、糖尿、体重、血圧などを日ごろから測定し、自分自身の糖尿病の状態を常に知っておく事も大切です。これらの治療および測定を行うにあたっては、最初は医師や看護婦などから指導を受けますが、その後は自分で行います。こうした事から、糖尿病は自己管理の病気といわれています。つまり糖尿病の「主治医」はあくまで患者自身なのです。


 ★食事療法(3つの原則)★

 《第1の原則 摂取エネルギー量の調整》

 糖尿病になったからといって、食べてはいけないという食品はありません。健康な人と同じようになんでも食べられます。ただし、食べる量は日常生活に必要な最小限に制限する必要がありますので、体重や労働の強さに応じて調整します。一日に必要なエネルギー量は標準体重×運動量で求められます。標準体重は身長(m)×身長(m)×22で計算され、運動量の目安(体重1kg当たり)は、軽労働25〜30キロカロリー、中労働30〜35キロカロリー、重労働30キロカロリー以上となります。

 例えば身長165cmの成人で事務的な仕事をしている人の一日のエネルギー量は1.65×1.65×22×30で約1800キロカロリーとなります。インシュリン非依存糖尿病ではインシュリンが不足したり、その働きが悪くなっているのですから、そのインシュリンの働きに合わせた食事の量にする事が必要なのです。そうすれば、食物は体の中で完全に利用され、余分なブドウ糖が血液の中にあふれるという事はありません。インシュリン依存糖尿病の場合でも、成人では、一日エネルギー量はインシュリン非依存糖尿病の場合と変わりませんが、小児・児童では発育・成長が関係しますので主治医との相談が必要です。

 《第2の原則 糖質タンパク質・脂肪をバランスよくとる》

 総エネルギー量の15〜20%をタンパク質、20〜25%を脂肪、残りの約55〜60%を糖質で補います。

 《第3の原則 ビタミン・ミネラルを十分に補給する》

 ビタミン・ミネラルは、代謝を円滑にする潤滑油として必要です。この種の微量栄養素は、野菜・海藻類・きのこ類などに多く含まれていますが、こうした食品には、血糖値の上昇を抑えたり、コレステロールを下げたりする食物繊維も多く含まれており、しかもエネルギーは低いので多めに食べても差しつかえありません。一日300g以上は摂るようにしましょう。


 以上3原則以外に次の事にも注意しましょう。

 《食事療法を身につけるコツ》

 適切な食事のためには、「糖尿病食事療法のための食品交換表※」を使う事です。「食品交換表」では、食品を6つのグループに分け、それぞれの食品の「80キロカロリーになる量(g)が、1単位」として示されています。台所や食卓に置いて活用する事をおすすめします。

 《食事療法を長続きさせるコツ》

 糖尿病食は健康食です。家族ぐるみで糖尿病のための食事をしましょう。きのこ類・こんにゃく・海藻類など食物繊維が多い低エネルギーを献立に加えましょう。副食の味は塩分を少なく、薄味にし、食物はよくかんで食べましょう。清涼飲料水や菓子類はできるだけ控えて下さい。お酒はできるだけ禁酒しましょう。合併症がなく血糖のコントロールがよい場合でも、日本酒なら一合、ビールなら中ビン一本、ウイスキーならダブル一杯までです。

鈴木 密雄(水沢市・内科小児科医師) 胆江日日新聞社より 

※ 糖尿病食事療法のための食品交換表
発刊:文光堂  日本糖尿病学会 編
文光堂ホームページ:http://www.bunkodo.co.jp/