●糖尿病について(1)

 「飽食の時代」といわれて長い年月がたつ今、日本では糖尿病の人と糖尿病の可能性が否定できない人を合わせると、1370万人に達すると推定されています。すなわち「いまや国民の10人に1人が糖尿病かその可能性がある」という事をあらわしております。これから21世紀の国民病ともいうべき糖尿病について、3回に分けてお話しいたします。


 ★糖尿病とはどのような病気★

 糖尿病は、生活習慣病の代表のような病気とよくいわれていますが、いったいどんな病気なのでしょうか。糖尿病とは、血液中のブドウ糖(血糖)の量が多くなりすぎ、その結果、次第に血管などに影響を及ぼし、目や腎臓(じんぞう)、神経など全身に障害を起こす病気といえます。

 原因は、膵臓(すいぞう)で作られるインシュリンというホルモンが不足したり、その働きが不十分になったりするからです。インシュリンは血糖を正常に保つ働きをしており、食事によって体に取り込まれた糖質タンパク脂肪などの栄養素が体でうまく利用されるための大切な調節をしています。インシュリンが不足したり、働きが不十分になると、この調節がうまくいかず、ブドウ糖をエネルギーとして使ったり、肝臓や筋肉に蓄えたりする事ができなくなり、血液中にたくさんのブドウ糖がとどこおるようになります。糖尿病は、ブドウ糖などの栄養素が体の中で有効に利用されない代謝異常の病気です。


 ★糖尿病のタイプ★

 糖尿病のタイプにはいろいろありますが、そのうち大部分を占めるものは大きく二つに区別されます。発症の仕方から1型糖尿病、2型糖尿病と呼ぶようになりました。

 1型糖尿病は、主として幼児から15歳以下の小児期に、比較的急激に発症します。ビールス感染後それをきっかけにおこってくる自己免疫と呼ばれる異常現象によって膵臓のインシュリン分泌細胞であるB細胞が破壊され、インシュリンを分泌する事ができなくなり、急激な高血糖をおこします。このため注射でインシュリンを毎日補給しなければならないので「インシュリン依存型糖尿病」と呼ばれます。

 2型糖尿病は、生まれつきの遺伝素因に過食・肥満・運動不足・ストレスなどが加わって発症し、日本人の糖尿病の約90%を占めます。このタイプは、インシュリンの分泌量が低下しているか、インシュリンの血糖を下げる作用が弱くなって発症するもので、通常インシュリン注射は必要としないため「インシュリン非依存型糖尿病」と呼ばれます。また40歳以降に発症する事が多いのですが、最近は肥満児の増加とともに10代から発症する子どもにも、このタイプの糖尿病が増えています。

 上記二つのタイプの糖尿病の他に、薬剤性(ホルモン剤服用)、内分泌疾患(甲状腺機能亢進症、末端肥大症など)、膵疾患(慢性膵炎、膵癌など)、肝疾患(慢性肝炎、肝硬変など)の原因で引き起こされる糖尿病もあります。


 ★症状★

 1型糖尿病では発病が急激です。そのため、のどが渇き、全身のだるさ、多飲多尿、そして顕著なやせ症状はいずれも急激にやって来ます。これに対して2型糖尿病ではその大部分がしのびやかに発病して来ます。20代前半までは標準的な体重であった人が、30歳前後を境に太り出し、太り切って数年を経た時点で、たまたま調べた尿糖検査で糖尿がみつかるといった具合の発病の仕方こそが2型糖尿病の典型例です。それ故肥満ということを除けば、無自覚無症状なのが、このタイプの特徴です。

 しかし、中には早期発見の機会もないままに放置されていたといった例では、体重減少、疲れ、無気力、性欲の減退、おでき、かゆみ、などの症状でようやく糖尿病に気づく場合もみられます。そこでこのような自覚症状を待つのでなく、早期に糖尿病を発見するには、定期的に検診を受けるなどして尿糖や血糖についての検査が欠かせません。

鈴木 密雄(水沢市・内科小児科医師) 胆江日日新聞社より