●不整脈

 心臓は、正常の場合、1分間に50回から100回規則正しく打っており、これ以上早いものを頻脈、遅いものを徐脈といいます。また、不規則に打つものを不整脈と呼んでいます。この不整脈が生じたときの症状はどのようなものでしょうか?

 最も一般的な症状は動悸(どうき)です。動悸とは、心臓の拍動を自覚することで、ふだん私たちは心臓の拍動は感じませんが、リズムの異常が生じると動悸がします。しかし、正常の人でも運動したり緊張や不安があったりするとドキドキしますから、動悸がするからといって必ずしも心臓が悪いわけではありませんので、あまり心配しないでください。

 このような日常生活の肉体的、精神的興奮時以外に動悸がする場合にはまず自分で脈を触れ、その状態を調べてみてください。脈拍が一番触れやすいのは手首の動脈でだれでも簡単に触れることができます。脈が早いか遅いか、一分間に何回打ってるか、乱れるがあるかないか、自分で診察してみてください。

 不整脈で一番頻度の多いのは、期外収縮といいますが、脈が3つ打って1つ休む、5つ打って1つ休むといった具合に脈が休むもので、これ自体が心臓の悪い人でこの不整脈の出る人はもともとの心臓の病気を治してください。健康な人でも疲れやストレス、酒やタバコの飲みすぎが期外収縮を誘発しますから節度ある生活が一番大切です。

 次に多い不整脈は、心房細動で、これは脈の規則性が全くなくなりバラバラに打つものです。一過性の場合と固定した心房細動と二種類あります。心房細動は、それ自体に命に別条ないものですが、これになると心臓の中に血栓という血の固まりが生じることがあり、この血の固まりが脳の血管に流れ込むと脳梗塞(こうそく)を起こしてしまいます。ですから心房細動の人は、症状がなくても血栓を予防する薬を服用することをおすすめします。

 次は、頻脈と徐脈についてお話をしたいと思います。脈拍が1分間に100回以上になることを頻脈といいます。頻脈は、運動すればだれでもなりますし、発熱や緊張でも早くなりますからそのような場合には問題ありません。病的なものとしてはバセドウ病という甲状腺(せん)の病気や貧血などが代表的で、いつも脈が早い人はそれらの検査を受けてみるとよいでしょう。

 徐脈は、これとは反対に脈が1分間に50回以下の場合をいいますが、これもスポーツマンがその典型ですが、ふだんスポーツをしている人は、徐脈の傾向があり、これはむしろ心臓の予備力がある表れです。これとは異なり、いつも極端な徐脈で運動など体心拍数の増加を必要としているときでも早くならない場合は異常で、洞不全症候群、房室ブロックなどの心臓の病気で起こります。

 症状のある場合、すなわちめまい、息切れ、失神発作などが生じるときは、人工ペースメーカーという器械を入れる必要があります。人工ペースメーカー治療は、胸部の皮下にペースメーカー本体を植え込む比較的簡単な手術ですので、心臓の手術とは違い、手術自体の危険はまずありません。

 特殊な頻脈として、発作性頻脈症と呼ばれるものがあります。これは、突然脈が150から200回くらいに早くなり、そしてやはり突然にピタッとおさまるものです。そのほとんどは、上室性頻拍という命に別条ないものですが、中には、心室性頻拍という危険なものもありますから、このような発作のある場合には心電図の精密検査が必要です。最近では、薬による治療のほか、カテーテルアブレーションという方法で根治することもできるようになりました。

 以上、不整脈のお話をしました。もし、皆さんが動悸を感じたらまず脈をみて、乱れがあったり、極端に早かったり遅かったりしたなら、一度心電図検査を受けてみてください。

石川 健(水沢市・循環器科内科医師) 胆江日日新聞社より