●狭心症

 狭心症とは、文字通り胸がしめつけられるように苦しくなる病気で、その症状は、特徴的な胸痛発作です。典型的な狭心症の場合、症状は労作時、たとえば坂道を上る、あるいは階段を上るなど心臓に負担の増す状態で起こり、胸全体が、圧迫されるように苦しくなります。運動や労作以外にも、寒い所に出た際、食事、排便などでも症状が出ることもあります。

 また、異型狭心症の場合は、安静時、特に夜間就眠時に胸痛発作が起こります。狭心症の胸痛は、胸全体に広がりを持つのが特徴で、一点を指先でさすことはできません。持続は数分ないし15分以内であり、長時間続くものはそれ以外の病気を考えるべきでしょう。はっきりした胸の圧迫感であればだれでも心臓が悪いのかと考えますが、そうでない場合も多く、軽い胸の不快感のみのこともあり、ノドの詰まる感じ、歯グキの違和感、左腕の脱力感、背部の重苦感など、必ずしも前胸部の症状でないこともあり注意が必要です。

 治療としては、内科的に薬を服用するほか、最近ではPTCAと言いますが、狭くなっている心臓の血管を風船やステントという方法で拡張するやり方もあります。これはカテーテルという細かい管を足の動脈から心臓まで挿入し、その先端についている風船をふくらませて病気を治すもので、手術では無く、比較的簡単にレントゲン室で行う事が出来ます。風船のみの場合は、狭い血管に圧力をかけて押し広げるだけですので再狭窄(きょうさく)といって一度広げた部分がまた狭くなってしまうことが難点だったのですが、ステントという金属のネット状のものを併せて用いる方法になってからはこの問題も少なくなりました。

 重症の場合には手術でバイパスをつくることも行われます。これは狭くなっている血管の先の部分に動脈や静脈をバイパスとしてつなぐやり方で、血管の狭窄の程度が強く、PTCAができない場合に行われます。

 狭心症はそれ自体、命にかかわることは少ないのですが、放置しておくと心筋梗塞(こうそく)というさらに重い病気を引き起こす危険があるので重要といえます。心筋梗塞は心臓の血管が詰まってしまう病気で死亡率も高く、これを予防するために狭心症のうちに治療しておくことが大事です。

 狭心症、どのような人に起こりやすいのでしょうか?それは、心臓に栄養を送っている動脈(これを冠動脈といいます)の動脈硬化が進行しやすい人です。高血圧、糖尿病、コレステロールは特に血管の変化を起こす原因として重要です。また、喫煙、肥満、ストレスも同様に危険因子といわれています。家族的素因も大きく、家族に狭心症、心筋梗塞の人がいる場合は気をつけてください。

 狭心症は男性に多い病気で、50歳以降の男性で高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、喫煙、肥満、ストレス、家族歴など、あてはまるものが多ければ多いほど発症率は高くなりますから、そのような人は胸の症状には注意して下さい。

石川 健(水沢市・循環器科内科医師) 胆江日日新聞社より

 

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カテーテル

 体内と外界を結ぶためのいわゆる「管」である。カテーテルの先端は血管や消化管、尿管をはじめとする体内のさまざまな管やあるいは閉鎖空間(一般に「腔」という)などにつながっている。必要に応じてカテーテルを通じて体内の水分や血液などの液体を外に出したり、逆に栄養分や薬剤などを体内に入れたりすることができる。目的や入れる場所に応じてさまざまな種類のものがある。