このページはグランビア通信に書かれた
スペインよもやま話を集めています。
   
   --♪--♪--♪ スペインよもやま話 ♪--♪--♪-- 

  ---- チョッと寄り道ポルトガル 靴修理職人のアントニオ ----

 物価の安いポルトガルは旅行者にとっては息抜きの国といえるかも
 しれません。ヨーロッパの中でもとりわけ物価が安く、ゆったり時間が
 進んでいるように思えて、つい長く滞在する旅行者が多いようです。
 私の知り合いにも一人、チョッと寄り道のつもりが2ヶ月になった人が
 います。

 首都リスボンから海岸沿いに北へ列車で2時間、ナザレというリゾート
 地があります。ユーラシア大陸の最西端の大西洋に面したのんびり
 したいいところです。ここの名物は紛れもなく「イワシの炭火焼」です。

 10年前の旅の話なので所々忘れていますが、靴修理職人の「アント
 ニオ」のことはよく覚えています。ナザレの駅が近くなる頃、車内で旅
 行者相手に話しかけてくる髭面の男がいました。腰のベルトに様々な
 国の言葉で書いた文面をビニールのホルダーに入れぶら下げていま
 した。旅行者の私を見つけて日本語のそれを見せてきました。「私は
 アントニオと言います、民宿をやっています一泊1500エスクード、食
 事付きです」
 
 安い!(当時のレートで1000円弱) いくらシーズンOFFといっても、
 だまされたとしてもたいした事ないと思い、かれの民宿の世話になる
 ことにしました。 着いて見るとそれは本当に普通の家でそのうちの
 一部屋が私のその日の宿でした。ベットの本棚には様々な旅行者が
 置いて行った、読み終わった文庫本が並べられていました。意外に
 日本の本が多く、同じ手口に引っかかり、ここに泊まった人がいるの
 だと安心しました。

 アントニオの家は山の高台にあり、海岸までは20分ぐらい歩かなけ
 ればなりませんでした。(安い理由はコレだったんです)海岸沿いの
 ホテルやお店が並ぶ通りを散歩しながら、陶器を見たり、名物のセ
 ーター(ナザレ編、太い毛糸で独特の模様)を見たり・・・・・

 何時の間にか夕暮れ時になり、喉も渇いてきました。おまけにあちこ
 ちのレストランの前では、いい臭いを乗せた煙が立ち始めました。
 イワシもそろそろ焼ける頃かなと、適当なテラスに座り、三匹ほど注文
 ビールと一緒に大西洋を眺めながらほうばりました。だんだん星が三つ
 四つと増え、三本目の缶ビールが空く頃は満天の星でした。
 「随分遠くまで来たな」と少し柄にもなく感傷的になりました。

 ほろ酔い気分で宿に着いたら、アントニオはなんと仕事をしていました。
 山と積まれた古靴の横で修理の仕事をしていたのです。本業はこれだ
 ったんですね、それにしても片足しかないような靴もあり、修理しても売
 れないような気がして仕方ありませんでした。

 アントニオは「待ってたぞ!」って顔して早速夕食の準備、もう11時過ぎ
 てるので断ったのですが、勢いに負けてしまい食べる羽目になってしま
 いました。でて来た料理は、ジャガイモとイワシとピーマンをサフランで
 煮たものでした。意外にサッパリして、美味しく、アントニオも一緒の食卓
 でした。彼は一人で食事をするのが嫌だったのか、それとも泊まり客と
 一緒の食事がアントニオの家のもてなしなのか、とにかく私が帰って来る
 のを待ってたんですね。

 当時私はスペイン語もほとんどわからず、ましてポルトガル語は全くわか
 らない状態で、でもなんとか旅はできるものですね。
 ナザレの人々はやさしいです。

 アントニオの話はまた次回、修理した靴の行き先や、ぽっかり穴の開いた
 屋根のこと、一緒に見たビデオの話、etc・・・・
 それでは、また。
        Adios!amigos amigas.

 今月から新しいスタッフが入りました(斎藤)、バルの方に遅くまでいます
 バルの営業時間が深夜2時まで延長になりました。(食事も出来ます)